びだんし
じゅにあさんは幼稚園まで、自転車で行きます。
冬の自転車は、向かい風が寒いのです。
かーちゃんの後ろにいるとはいえ、じゅにあさんも寒風を浴びます。
幼稚園に着く頃には、おはながたれております。
ずべびーー。
「あらまぁ、美男子がだいなしよ♪」
なんて言いながら、それをかーちゃんが拭くのです。
じゅにあが本当に美男子かどうかは、この際問題ではありません。
というか、かーちゃんは人の美醜に関してはとにかく疎い。
美男子かどうかの判断なんぞ、できようがないのです。
ただ、美男子だって言って育てたら、美男子になると思ってる(何)。
それだけのことなのです。
けど。
たとえそうだったとしても。
なかなかの親バカであることに変わりはない。
…
ってね。
思っていたのさ。
けど…まだまだだったらしい。
よもや、母を超えるほめ上手が存在したとは。
幼稚園の女の子がね!?
言ってくれるんですって!!
「じゅにあくんは、おはながたれても びだんしだよ♪」
って!!!!
マジかーーーー!!?
お鼻が垂れててもかッ!?
お鼻が垂れてても!?
美男子だなんてええええぇッ!!!
そんな…そんなゲロ甘なこと、母だって言えませんよ…!?
それなのに…それなのに……ッ!!
かーちゃん、5歳女児に完敗でゴザイマス。
なんといふ深き愛。そんな発想なかったわ。
完敗。おみそれしました。