わたぼこ堂雑記帳

「お前のはのーみそはわたぼこりか!」 う~ん、さもありなん…そんなたけちよの日記。あなたのお役に立ちません。

[日常][BNO]10年前思い出した

今日は、昔話をします。




中学校の同級生に、Yという男が居ました。



そこそこ勉強ができ、そこそこ見た目も良く、割と面白いヤツでした。
クラスでも、それなりに人気がありました。



しかしこのY、ひとつ致命的ともいえる欠点がありました。



群れるとどうしようもない馬鹿餓鬼になるのです。



一度そのテの友人とつるむと、まさしく豹変するのです。
クラスに、少し知的障害を持った女の子がひとり居たのですが、
その子を机ごと数人で囲んで、無理矢理『かごめかごめ』やってた時は、
彼への評価を覆さざるを得ないと確信しました。



しばらく状況を見極めた上で私、殴りかかったんですが…まぁそれはともかく。



でもそのテの友人がその場に居ないときは、まるで良いヤツでした。
冗談に富んだ会話も、筋の通った話もできるヤツでした。
彼の書いた読書感想文は話の展開が見事で、私は舌を巻きました。
13歳が読書感想文に『レ・ミゼラブル』かよ。



私にとってYは、別段友達でもないけど嫌いという程でもないヤツでした。
…ダメなヤツだとは思っていましたが。
そんなYの進学先は、偶然私と同じ高校でした。



特に関わりも無く1年・2年と過ごしていましたが、
3年になって同じクラスになりました。
別にこちらとしては避けてはいなかったのですが、
話しかけられることもなかったので、相変わらず関わりは無いままでした。



ある日。
私の幼馴染である親友の子が、どこかでYと会ったらしく
こんな話を振ってきました。



「あのなー…、あんたのクラスに、Y、おるやろ…?」


「あー、うん。居るねぇ」


「こないだ会ってんけどさー…何かすげーヘコんでてさー…」


「…ほぅ」


「俺、いろんな人に誤解されてるー、って。


 いろんな人に、すごく嫌なやつに見られてるー、って。
 本当の俺はそうじゃないのに、皆が本当の俺を見てくれへんー、って」


「……フーン」



私の冷たい反応をよそに、彼女はYの苦悩を語ります。



「確かに俺自身、アホな事し過ぎやなー…って思うことある。
 本当は、自分でも、判ってる。やったらアカンって事くらい。


 でも、止められへん。ー…って。


 自分ではどうしようもなく止められないんだー、って。
 本当は止めて欲しい。叱ってくれていい。
 俺だって、自分で自分が止められない俺が嫌いや。大嫌いやー…、って」



そこにYへの恋愛感情は無いことぐらい、親友なので判ります。
あるのは、苦悩するひとりの友人の、力になりたい、その想いだけ。



「友達と居ると、俺が俺じゃなくなるんだー、って。
 俺は本当はそんなヤツじゃないんだー、って。


 ホンマにな? あいつ、しんどそうやってんっ…!
 だから、Yの事な、誤解せんといてやって欲しい……!


 …なぁ、あんた今クラス一緒なんやろ?
 ちょっとづつでも良いから、何とかしてやってあげられへんかなぁ…っ?」



慈母の表情を浮かべる親友に、でも私は正直に話すことしか出来ませんでした。



「…ふむ。ヤツの心情は理解できた。同情もする。



 でもな、誤解といわれても、やってる事知ってたら何が誤解なのかワケ判らんで?
 あいつ、お前にはそんな事言いながら実際何やってるか知ってるか?



 ウチみたいな弱小クラブの部室忍び込んで、
 物品荒らして、モノ壊して、使えそうなモン勝手に着服して使ってんだよ?



慈母の目が、点になった。



「ウチら、実際ヤツの被害に遭ってるもんー。
 軽い嫌がらせとか通り越して、実際問題物質的に被害が出てる。
 部の財産だけじゃなく、個人の持ち物だってたくさん無くなってる。
 どやって大目に見ろっての?



 弱小だから何やっても良いと思ってんだろーね〜。
 他の部にも被害出てるよ?知名度低いクラブばっかに。
 やれるモンならサッカー部とか吹奏楽部とかデカいトコ荒らしてみろっての。
 高校生にもなって馬ッ鹿じゃねーかアイツ。
 典ッ型ー的な『強いものには弱く、弱いものには強い』タイプな、アレ。



 同情はするけど、残念ながら肩入れはできないねぇ〜。



 そんなヤツじゃない、って言われてもこっちから見れば
 疑いようのないぐらい『そんなヤツ』な訳よ。



 自分で自分を止められへん、ったって、んじゃ誰が止めるっつーのよ。
 止めたら素直に聞くのかよ。
 ってか止めたっての。止めたことあるっての。現場押さえて文句言ったっての。
 アイツどーしたと思う?ヘラヘラ笑ってごまかしながらフェイドアウトしてったよ。



 それとも『これは彼のどうしようもない性質だから、暖かく見守りましょう』って
 すべて受け入れて黙ってニコニコしてる?
 ンなモンできる訳ねーじゃん。こっちは実質迷惑被ってんだから。
 大体それはヤツのママか彼女の役目。彼女居るか知らんけど。
 他のヤツに期待すんじゃねー。



 いかなる思いがあろうとも、
 いかなる理由があろうとも、
 いかなる苦悩があろうとも、


 迷 惑 な モ ン は 迷 惑 。


 そ の 迷 惑 を 止 め ら れ る の は 、 本 人 だ け 。


 『本当は止めたいんです助けて』って直接言われれば出来る範囲で考えもするけど、
 こっちには迷惑かけ続けてよその人に『助けて』って言ってもねー。



 あんたの話を信じるとすれば、心のなかでは謝ってるのかも知れないけど、
 こっちとしては、直接謝罪があるでなし。同情以上のことは断じてできない。
 あったとして、態度が改まらないのであれば迷惑だって疎み続けるし、
 許すこともない。





 …どう?私は彼を弁護すべき?」



その後の会話は書くまでも無いですが、
慈母は完全に裏切られた表情になってた、とだけ言っておきます。




許せるはずも無い迷惑なことも、迷惑をかける側からすれば
『仕方ない』とか『やむを得ぬ事情』だと思っている場合がある、と
そのとき知りました。
同時に、だからといって、迷惑を耐え難く感じているのなら
相手に温情を示す必要は無い、と確信しました。



社会生活を送る上で、少し我慢すれば円滑に話が進む、という場合も確かにありますが、
少しでない我慢を相手に強いるのは立派な悪です。
迷惑をかけてくる相手をどうしても許せない人が悪くて
どうしても迷惑をかけてしまう人は悪くない、なんてことは絶対無いのです。



迷惑を受けている側が『耐え難い迷惑だ』と感じている時点で、
迷惑をかけている側が100%悪いのです。
そこにどんな、自分なりの言い訳があったとしても。






…何でまたこんな10年も前の話をする気になったか、っていうと、




何処とは言いませんが
大切な友人のブログが荒らされているのを見たからです。



だからこそのこのカテゴリなのさ。



対象の性質からして同じ状況ではないと思いますが、主張は一緒。



 いかなる思いがあろうとも、
 いかなる理由があろうとも、
 いかなる苦悩があろうとも、



 迷惑なモンは迷惑。



 その迷惑を止められるのは、迷惑かけてる本人だけ。



 たとえ謝罪の言葉があっても、態度が改まらない以上
 迷惑だって疎み続けるし、許すこともない。



それが、たけちよの意見です。