わたぼこ堂雑記帳

「お前のはのーみそはわたぼこりか!」 う~ん、さもありなん…そんなたけちよの日記。あなたのお役に立ちません。

ピンキングばさみ

ピンキングばさみの話。




↑コレ(再掲)な。






ピンキングばさみが我が家に来たのは、私が小学校5年生の時でした。
5年生と言えば、家庭科の授業が始まる頃。
そう・・・実習で使うからって、小学校で注文して、そのときやってきた代物。



いや、厳密に言えば、家庭科には要らなかったのです。
裁ちばさみや糸切ばさみといった、必須教材と並んで、
欲しい方は一緒にどうぞ〜・・・みたいな顔して、注文書に並んでただけで。



当時ギザギザの刃がついたはさみなんて、とてもめずらしく。
(今みたいに工作用が手軽に手に入る時代ではなかった)
そもそも、どう使えばいいのかすら、さっぱり分からず。




けれども・・・とても、ほしかったのです(正直)。





「お母さん、ピンキングばさみって何?」


「布の端をギザギザに切れるハサミー」


「ふうん・・・いる?」


「いや別に。無くても洋裁はできるよ。
 持ってない人も多い。
 すっごく洋裁がシュミ―って人だけ、たまに持ってるぐらいのモン。
 いりません」


「えー、欲しい〜」


「いらんって」


「でも、お母さん洋裁やるやん?
 (※通学グッズはもちろん、子どものパジャマやワンピースぐらいは縫う人でした)
 

 お母さんなら、持っててもいいん違うん・・・?」



「・・・」





みたいな経緯を経て。
めでたく、我が家にお迎えとなった記憶があります(笑)。


もっともその後、紙工作に使おうとしたところを止められて
私の分からない場所に片付けられてしまったので、
たくらみはもろくも崩れ去ってしまったワケですが・・・(涙)。



だからといって、母上が愛用したかと言えば、イマイチそんな感じでもなく。



正直、使われているのを、ほぼ、見たことがありません。




時は流れ。
二十数年後。




目が衰え、洋裁への情熱もほぼほぼなくなった母上。
自分のミシン台(既にオリヅルラン置き場になっていました)の扉を
観音開きにして言いました。



「使うのあったら、持ってってちょうだい」



母上としては、色とりどりのミシン糸や、定番の服の型紙などを想定していたようなのですが、
真っ先に思い浮かんだのは、あの時のピンキングばさみでした。



「ピンキングばさみは?まだある?」


「あるよ」



奥の方から、難なく取り出されるピッキングばさみ。
(特に隠されていたワケではなかったと知って、ちょっと笑った)
箱入りです。ずっしり重い。
記憶の中よりはるかにレトロなパッケージ。時代を感じます。



見たところ、サビも曲がりもない感じ。
ありがたーく、持っていくことにしました。



という訳で。
使っているのですけど。
二十数年前のピンキングばさみ。





重い!!
刃渡り短い!!!
動きが固い!!


つかいにくい!!!!!





なるほど、どうりで母上が使っているのを見ないワケだ・・・と
四半世紀経って、身を以て思い知ったよね。



良品とそうでないものの差が今ほどなかった(100均もまだなかった)当時のこと。
おそらく粗悪品だから使いにくい訳ではなくて、良品だけども技術的な問題で
これが精いっぱいだったのだろうな・・・などと思うワケですよ。
今の技術で作ったものであれば、同じ値段で数倍使いやすいだろうに(想像だけど)。



あの時、『欲しい』に目をくらませずに。
必要ないと、見送って。
必要な今、買っていれば。



こんな使いにくさは、味わわずに済んだワケよ。




使いにくさは、教訓として。
ピンキングばさみを手にするたび、手と心にズッシリ重さがかかる。
そんなたけちよさんです。