脱出劇
「とらがにげたー」
完全に慌ててテンパってる母上の声が響く。
でも助けの手を差し延べる者は誰一人居ない。
5分後…
「ほら見て、ちゃんと確保したよ(ニッコリ)」
…。
「もー、とらってばズルいんだよー?ベッドの下に隠れてるんだもん」
…ほぅ…。
「人が雨戸閉めようとするのを見計らって、ダダダダダーッ!って猛ダッシュするんだよ!」
…それで…?
「部屋の扉も閉めたし、絶対大丈夫だと思ったのにー!」
…そうか…。
「一枚目の雨戸閉め終わって二枚目閉めようとしたら、目の前をネコが走るんよ!」
…そうだな…。
「何かとらに似てるなー?と思ってシッポ見たら短いし」
…ふぅん…。
「ちょっと油断しただけなのに見計らったようにスルッと逃げ出して…とらめー!」
…母上。
一体何十回目だと思っているのですか?
ネコに人が出し抜かれてどうするんですか?
毎回絶対大丈夫なんですよね…なのに何故何度も逃げられるのですか?
あなたは万全を期しつつ油断するのですか?
とらを脱走させるのは何故100%あなたなのですか?
そして何回同じ言い訳を聞かせるつもりですか?
あのね母上、
紛れもなくあなたと同じ血が私に流れているのだと痛感します。 (え?)
以下の法案が、家族会議に提出されました。
【母上様は、とら脱走させる度、専用貯金箱に500円玉投入。
中身は年度末確認の上、クリスマス料理のグレードアップに使用】
賛成3、反対1、欠席1。
可決されますた。